寄生虫名 | Kudoa amamiensis (奄美クドア) |
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分類学 | ミクソゾア門、粘液胞子虫綱、多殻目 |
宿主名 | ブリ(Seriola quinqueradiata)、カンパチ(Seriola dumerili)、スズメダイ(Chromis notata) |
病名 | 奄美クドア症 |
寄生部位 | 体側筋肉 |
肉眼所見 | 1から数 mmの白色球形シストが多数形成される(写真1)。重篤に寄生しても、宿主魚に致命的な影響は及ぼさない。 |
寄生虫学 | シストの内部で多数の胞子が産生される(写真2)。胞子は4個の極嚢を持ち、径5-6 μm、長さ4.5-5 μm。極嚢の長さ1.5-2 μm。生活環は不明。無脊椎動物の宿主が介在すると推測される。 |
病理学 | 感染初期は筋細胞内で栄養体が発育し目立った宿主反応は見られないが、やがて線維性結合組織に被包されてシストを形成する。筋肉融解は起こらない。 |
人体に対する影響 | 人間には寄生しないので、食品衛生上の問題はない。 |
診断法 | シストをつぶしてウェットマウントで胞子を確認する。近縁種のKudoa iwataiとは、胞子のサイズと形態で識別できる(江草,1986)。標本はスメアにしてギムザ染色またはディフ・クイック染色する。間接蛍光抗体法とPCR法も開発されている(Yokoyama et al., 2000)。 |
その他の情報 | 1975年に開催された沖縄海洋博覧会で、海洋牧場に放養されたブリが100%重篤寄生を受けて問題となった病気である(Egusa & Nakajima, 1980)。それ以降、奄美大島と沖縄の一部の海域でのみ発生する風土病とされていたが、最近、オーストラリアのグレート・バリア・リーフに生息するサンゴ礁魚からも発見された(Whipps et al., 2003)。感受性は魚種によって大きく異なり、ブリでは筋肉1 gあたり数百個のシストが形成されるにもかかわらず、カンパチでは数十個、スズメダイ類では1個または数個程度しかできない(杉山ら、1999)。なお、本疾病を防除するのに有効な対策はない。 |
参考文献 | 江草周三(1986):多殻目粘液胞子虫とくにクドア類について.魚病研究,21, 261-274. Egusa, S. and K. Nakajima (1980): Kudoa amamiensis n. sp. (Myxosporea: Multivalvulida) found in cultured yellowtails and wild damselfishes from Amami-Ohshima and Okinawa, Japan. Bull. Jap. Soc. Sci. Fish., 46, 1193-1198. 杉山昭博・横山 博・小川和夫(1999):沖縄県内における奄美クドア症の疫学的調査.魚病研究,34,39-43. Whipps, C. M., R. D. Adlard, M. S. Bryant, R. J. G. Lester, V. Findlay and M. L. Kent (2003): First report of three Kudoa species from eastern Australis: Kudoa thyrsites from mahi mahi (Coryphaena hippurus), Kudoa amamiensis and Kudoa minithyrsites n. sp. from sweeper (Pempheris ypsilychnus). J. Eukaryot. Microbiol., 50, 215-219. Yokoyama, H., D. Inoue, A. Sugiyama and H. Wakabayashi (2000): Polymerase chain reaction and indirect fluorescent antibody technique for the detection of Kudoa amamiensis (Multivalvulida: Myxozoa) in yellowtail Seriola quinqueradiata. Fish Pathol., 35, 157-162 |
写真2.Kudoa amamiensisの胞子
写真1.奄美クドア症を呈したブリの体側筋肉